マイ・パートナー・イン・ジャパン
Kとは一昨年スペイン巡礼中に出会い、南米を共に旅して、そのあいだにパートナーとなった。
今、私は彼を日本においてオーストラリアにいるわけである。
オーストラリアに発つ前、私は彼の地で何かしらつかんで帰りたいと思い、
「大きくなって帰ってくるからね」
とKに言った。すると彼は
「えっ、Bになって帰ってくるの」
と声を弾ませてあらぬ想像をしていたが、それはAのまましぼむ公算が大きいので期待するなと言い置いてきたのが2か月前のことである。
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そのKが、メルボルンに来た。
私が野菜中心の生活をしているのを心配したらしく、「肉を食べさせに来た」そうだ。
数日一緒に過ごしたあいだ、レストランでステーキをご馳走してくれたり、スーパーで厚切り肉を買って焼いてくれたりして、メルボルンに来てこんなに贅沢な日々を過ごしたのは初めてだった。
久々に他人と寝食をともにし、私は「一人で生きるほうが楽だ」と吐いたりしたが、ある宿でやっぱりKとなら一緒にいたいと思った。
いつもの旅のように宿で手洗いで洗濯をし、さてどこに干すかと考えたとき、部屋には洗濯物を置けそうな台やハンガーはなかった。
そういうときは洗濯ロープを張るのだが、宿の壁や備品を傷つけず、なおかつ安定して固定できる突起に設置しなければならない。
簡素な部屋で唯一ロープの両端をかけられそうな場所を見つけ、
「窓と椅子だね」
と言うと、Kは当たり前のように
「うん、そう思っとったよ」
と言って、私がシャワーを浴びている間に、私が考えていたより完璧な角度でたるみなくロープを張ってくれていた。
私と暮らせる蓼食う虫はKしかいないと思った。
(宿でKが作ってくれた夕食。え? ノロケ? そうですとも)